日本作物学会紀事
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栽培
酸性化多孔質ケイ酸カルシウム水和物のpHが水稲苗(Oryza sativa L.)の生育に及ぼす影響
平内 央紀渡邊 肇三枝 正彦
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2008 年 77 巻 3 号 p. 253-258

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抄録
苗箱施用に適した酸性化多孔質ケイ酸カルシウム水和物(APS : acidified porous hydrate calcium silicate)のpHを決定するため, pHを異にするAPSの苗箱施用が水稲苗の生育に及ぼす影響を育苗試験で検討した. 処理区はAPSの無処理区とpH 5.3, 3.9, 3.0のAPSを苗箱施用したAPS 5.3, APS 3.9, APS 3.0区とした. 床土pHは施用したAPSのpHが低いほど低下した. 水溶性および塩化カリウム抽出アルミニウムは床土のpHが低いほど増加し, APS 3.0区で著しく多かった. APS 5.3, 3.9区では水稲苗の乾物重, 充実度が無処理区に対して有意に高く, APS 3.0区の水稲苗は草丈, 乾物重, 充実度が最も低かった. APSの苗箱施用により水稲苗のケイ素栄養の改善効果がみられたが, APS 3.0区ではその効果が小さかった. APS 3.0区の水稲苗の根はヘマトキシリン染色により濃紫色を呈し, 根へのアルミニウムの蓄積がみられた. 各APS処理区の播種2日後の苗の種子根をヘマトキシリンで染色した結果, APS 3.0区では, 主に外皮や厚膜組織, 内皮等, 組織内部にアルミニウムの蓄積がみられた. エバンスブルー染色ではAPS 3.0区の根の組織は相対的に青く染色され, 活性を失った細胞が多く認められた. これに対しAPS 5.3, 3.9では両染色結果から正常な生育を示した. 以上から, 水稲苗の適切な育成のためには, APSのpHを3.9~5.5に維持することが重要である.
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© 2008 日本作物学会
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