日本作物学会紀事
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栽培
育苗時におけるキトサン含有溶液の施用が水稲苗の生育に及ぼす影響
大西 政夫
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2008 年 77 巻 3 号 p. 259-265

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抄録

水稲の育苗時にキトサン含有溶液を施用した場合の窒素成分以外の生育促進効果があるかどうかを調査した. キトサン含有溶液施用区は, キトサン溶液を吸水させて催芽処理した種子浸漬区, 発芽後にキトサン溶液を2回散布した散布区, 育苗全期間にわたりキトサン溶液に浸漬した苗浸漬区を設けた. 各キトサン含有溶液施用区とも, 対照区より苗の生育がわずかに促進される傾向を示したものの, 有意差はあまり認められなかった. しかし, 全ての施用区をこみにして, キトサン含有溶液の施用の有無のみでその効果をみると, キトサン含有溶液の施用により葉齢ならびに葉身, 葉鞘+稈および全植物体乾物重, そして葉身および全植物体窒素含有量の計6つの苗形質が有意に大きくなった. これらの形質では, 生育期間の平均気温が上昇するとともに促進効果が大きくなり, 20~22℃以上では促進効果が認められない事例数が減少する傾向が明らかになった. 以上より, 今回用いたキトサン含有溶液を水稲育苗時に施用すると, 苗の生育をわずかに促進する効果が期待でき, 特に生育期間の平均気温が20~22℃以上では, 促進効果を示す場合が多いと考えられる.

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© 2008 日本作物学会
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