2008 年 77 巻 3 号 p. 341-347
積雪地帯の水田で栽培される麦類に大きな被害を引き起こす褐色雪腐病に対するオオムギ葉身の抵抗性とフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)活性, 全フェノール, リグニン, 糖含量の関係について検討した. 褐色雪腐病に対する拡大抵抗性は1週間の低温順化処理により増加した. PAL活性は, 菌の接種後に増加し, 接種前に低温順化処理をした区が無処理区に比べて高かった. PALの阻害剤を葉面に散布すると, 低温順化処理による雪腐病抵抗性増加の効果がなくなり, PALが低温順化による拡大抵抗性の増加に関与していると考えられた. 全フェノール含量, リグニン含量は低温順化処理により増加した. メタノール可溶性及び水溶性糖含量は低温順化処理により大きく増加したが, 細胞壁糖は変化しなかったことから, 1週間の低温順化処理による拡大抵抗性の増加に細胞壁糖は関与しないと考えられた.