日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
群馬県東毛地域の早植・普通期水稲栽培における育苗箱全量基肥施肥法の継続が水稲の生育・収量に及ぼす影響
高橋 行継吉田 智彦
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2008 年 77 巻 3 号 p. 348-355

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抄録

群馬県東毛地域の早植・普通期水稲栽培において育苗箱全量基肥施肥法によって継続して栽培を行い, 水稲の生育・収量の変動について検討した. この地域の土壌はグライ土から成る肥沃な水田地帯である. 館林市の現地圃場で「苗箱まかせNK301-100」を供試し, 4か年継続して水稲を栽培した. 施肥量は本田における標準体系の基肥と追肥合計窒素施肥量の40%減とした. 前年作の稲わらは全量すき込みとして, 専用肥料に不足している燐酸, 加里成分は本田に施用しなかった. 1年目は標準体系に対する施肥量が実測値で49%減となり, 生育・収量は標準体系に比べて不足気味となった. 2~4年目は同38~45%減の施肥量であったが, 生育に明らかな差は認められなかった. 3年目は著しい虫害が発生したため, 4年目に3年目と同様の設計で追加試験を行った. 収量までの検討は3年間であったが, 継続施用による収量等の低下は特に発生しなかった. 肥沃な土壌条件であれば, 概ね減肥率40%で稲わらを圃場に全量還元することによって化学肥料として燐酸, 加里の不足分の補給を行わなくても標準体系と遜色ない生育・収量を得られることが明らかとなった.

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© 2008 日本作物学会
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