山口県でコムギを早播栽培した時にみられる小穂数の増減の品種による違いが生じる原因を明らかにするため, 幼穂形成過程における小穂位置別の小花分化パターンを調査した. 試験は1999/2000年, 2000/2001年, 2001/2002年の3シーズンに実施し, 品種は, 春播性を示すものから強い秋播性を示すものまで育成地の異なる9品種を用いた. 小花は, 慣行栽培した標準区では, 供試したすべての品種において幼穂の中央部の小穂で早く分化し, 先端および基部の小穂ほど遅く分化した. 早播栽培した早播区でも, 春播性の品種および強い秋播性の品種では標準区と同様に, 中央部の小穂で早く, 先端および基部の小穂で遅く分化した. 一方, 中程度の秋播性を示す九州育成品種のイワイノダイチと関東育成品種のアイラコムギは, 早播区では先端の小穂で早く分化し, 基部の小穂ほど遅く分化した. 一穂小穂数は, イワイノダイチとアイラコムギでは3シーズンとも早播区が標準区よりも多く, 春播性品種の農林61号と春のあけぼのでは3シーズンとも早播区が標準区よりも少なかった. ただし, 小穂別の着生粒数は, イワイノダイチの早播区では, 先端の小穂が, 早く分化したにもかかわらず, これよりも遅く分化した中央部の小穂よりも少なかった.