抄録
作物はハウスで栽培されることの多い園芸植物と異なり, 気温や降雨など野外環境の影響を直接受ける. 温室効果ガスの影響は北アジアで最も大きく, 日本における環境ストレス耐性の作物の作出は急務である. ストレス耐性品種の選抜法のひとつである収穫後の収量・品質調査には膨大な時間を要してきたが, 近年の著しい環境変動に対応するための効率のよい選抜法が望まれる. 本稿では, 作物学の分野ではこれまであまり注目されていなかった水分子の運動性に焦点をあてた研究について紹介する. 温度ストレスを受けた作物における水分子の動的情報は生理活性をどのように反映しているのか, またストレス傷害の「早期発見」の応用の可能性について解説する.