抄録
水稲における潮風害は, 台風により飛散した海塩粒子が穂部に付着することによって起こり, 穂部への塩分付着量が多いほど精玄米重が低下することが報告されている. 生産現場の水稲が受けたような潮風害を人為的に再現するには根からの塩水等の吸収がなく, 地上部にのみ塩を付着させる条件をつくることが重要である. 潮風害を再現するには特に穂部および上位葉部に塩を付着させる必要があるが, 穂部への塩分付着量と収量および品質との関係については再現試験によって検討した事例は少ない. そこで, 2004年台風15号通過時と同様の糊熟期に海水を1株当たり0, 5, 10および15mL 散布することによって潮風害を再現し, 散布量と穂部への塩分付着量との関係, 被害程度, 収量および品質について2004年台風15号による潮風害の実際のデータと比較検討を行った. 海水散布量と1穂塩分量との関係をみると, 海水散布量が多いほど1穂当たり塩分量は多くなった. 再現試験および実害データともに, 1穂塩分量と減収率ならびに整粒歩合との関係はほぼ同様の傾向を示した. 以上より, 海水散布により, 穂部への塩分付着によっておこる潮風害の解析は可能であると考えられた.