日本作物学会紀事
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栽培
低温期育苗における水稲種子の発芽に及ぼす浸種水温の影響
北野 順一中山 幸則松井 未来生大西 順平
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キーワード: 発芽率, 低水温, 種子, 浸種, 水稲
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2010 年 79 巻 3 号 p. 275-283

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抄録

三重県の水稲早期栽培では2月下旬から3月中旬の低温期に浸種作業が実施されるが,2007年と2008年に発芽不良が発生し問題となった.そこで,浸種水温,時期,期間を操作し,種子貯蔵期間,産地,調製ロットの異なる品種を用いて低水温浸種が水稲種子の発芽率に及ぼす影響と発芽不良の軽減対策について検討した.発芽率には浸種初期の水温の影響が大きく,浸種初日を5℃の低水温にするとその後を12.5℃の適水温で浸種しても発芽率は抑制された.逆に浸種初日を12.5℃の適水温とするとその後を低水温としても発芽率は低下しなかった.また,浸種開始から2~8時間のみ適水温としその後低水温とした浸種でも全期間を適水温とした浸種と同等の発芽率を確保できることが確認されたことから,短時間の適水温浸種は低温期の育苗において発芽を安定させる有効な手法であるといえる.低水温浸種による発芽率の低下は品種や貯蔵期間にかかわらず発生し,前年産種子であっても低水温浸種で発芽不良が起こる危険性が高い種子の存在が確認された.

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© 2010 日本作物学会
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