抄録
近年,長野県内の一部地域では,トウコンと呼ばれる雑草化した赤米(以下,雑草イネ)の発生拡大が問題となっている.本研究では,県内各地から収集した雑草イネの代表的な集団について,脱粒後の種子の生存動態を知るため,土壌表面に置床した種子の越冬生存性と,埋土した種子の寿命をそれぞれ圃場条件下で調査した.土壌表面に置床した種子は,越冬2年目に全て死滅した.作土層(地表面下10~15cm)に 埋土した種子は,越冬3年目に全て死滅した.土壌表面に置床した種子の越冬生存性および埋土した種子の寿命には集団間で大きな差があり,越冬1年目では休眠が深い集団ほど越冬生存性が高く,土中の生存個体数が多い傾向にあった.以上の結果から,雑草イネの防除には脱粒した種子を地表面で越冬させることで死滅を促進し,作業機械などを介した圃場への種子の侵入を遮断した上で徹底防除を2年間実施することにより根絶が可能であると推察された.