日本作物学会紀事
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栽培
水稲湛水直播栽培における低苗立ち密度で出現した高位分げつと その母茎との形質比較
名越 時秀内田 良太玉井 富士雄平野 繁廣瀬 友二元田 義春福山 正隆
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2010 年 79 巻 4 号 p. 424-430

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抄録
水稲の散播栽培で苗立ち密度の不均一性のために生じる低密度状態を想定し,苗立ち密度が50本/m2条件下における,高位分げつの出現とその諸形質についてその母茎の各形質と比較した.その結果,高位分げつが出現した株は調査した253株の98.8%であり,そのうち22株について詳細な調査を実施し,59本の高位分げつから出穂を確認した.また,その出穂分げつは,1本を除き,すべて2枚の葉(前出葉は含まない)を保持していた.その分げつの出現節位は,ほとんど止葉節の直下の節であった.高位分げつの約半数からはさらに分げつが1本ずつ出現したが,出穂はみられなかった.高位分げつの1穂籾数(平均値18.9粒),登熟歩合(55.8%),玄米千粒重(17.0 g)および1穂玄米重(0.211 g)は,それぞれ母茎の20%,71%,84%および14%の値であった.また,その米粒はほとんどが青未熟粒などの未熟粒であった.以上より,高位分げつは,その母茎に比べ1穂玄米重が極めて小さく,さらにその米粒もほとんど未熟粒であり,玄米品質の劣化は顕著であると判断された.
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© 2010 日本作物学会
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