日本作物学会紀事
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栽培
ピラクロストロビン剤散布のダイズの生育,収量および病害発生に対する効果
加藤 雅康田澤 純子澤路 聖之島田 信二
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2011 年 80 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

ストロビルリン系殺菌剤の一種であるピラクロストロビン剤がダイズの生育,収量構成要素および病害発生に及ぼす効果を異なる散布の時期および濃度条件下で解析した.2006年にピラクロストロビン剤をダイズの開花初期と開花終期に1333倍希釈(150 g成分量ha-1)で散布したところ,対照薬剤のイミノクタジンアルベシル酸塩水和剤の1000倍希釈(400 g成分量ha-1)散布区と比較して,開花終期散布区では成熟期の遅延と百粒重の増加が認められたが,開花初期散布区では明瞭な差は認められなかった.2007年に開花終期にピラクロストロビン剤を1500倍(133 g成分量ha-1),3000倍(67 g成分量ha-1),5000倍希釈(40 g成分量ha-1)で散布したところ,成熟期の遅延は認められなかったが,散布濃度の増加に伴い百粒重が増加する傾向にあり,同時に粒径の大きい子実の割合が高くなった.また,散布時期や散布濃度に関わらず,ピラクロストロビン剤散布は対照薬剤のイミノクタジンアルベシル酸塩剤散布と比較して紫斑粒の発生を有意に抑制した.さび病,葉焼病および褐紋病の発生量は処理区間で差が認められなかった.これらのことから,ピラクロストロビン剤の開花終期散布は紫斑粒発生の抑制のみならず,子実の百粒重と粒径増大にも効果があると考えられる.

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© 2011 日本作物学会
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