抄録
山形県庄内地域でのダイズ品種「タチユタカ」の作況試験結果 (1989年~2008年) を用いて,百粒重低下の実態および登熟期間の気温と百粒重の関係を解析した.この間の平均百粒重は23.9 g,平均気温は22.1℃であり,1990年代後半以降は平均百粒重を下回る年次および平均気温を上回る年次が多く出現した.単位面積当たり莢数が平均値 (772 莢 m-2) 未満の試料では莢数と子実重には有意な正の相関 (r=0.690*) が,単位面積当たり莢数が平均値 (772 莢 m-2) 以上の試料では百粒重と子実重には有意な正の相関が認められた (r=0.917**).このことから,山形県庄内地域において百粒重の低下は単位面積当たり莢数が平均値 (772 莢 m-2) 以上で子実重に影響を与えていることが明らかとなった.さらに,登熟期間 (開花期~成熟期) の気温と百粒重には有意な負の相関が認められた.気温と百粒重に負の相関がある理由として,気温日較差 (8月1日~9月1日) が小さいと乾物重増加量 (8月1日~9月1日) が少なく,そのことが莢当たり乾物重増加量の減少に繋がり百粒重に負の影響 (r=−0.435*) を与えると考えられた.以上のことから,寒冷地である山形県庄内地域において,登熟期の高温が百粒重を低下させていることが明らかになった.