日本作物学会紀事
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栽培
イネの穂ばらみ期冷温による不稔発生条件下における隔離距離と交雑率との関係
丹野 久竹内 徹木内 均芝池 博幸
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2011 年 80 巻 1 号 p. 49-58

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抄録
イネ種子親の不稔発生条件下での種子親と花粉親間の距離と交雑発生との関係を解明するために,うるち花粉親圃場から風下側に,2006年には2 m,26 m,150 m,300 m,2007年には150 m,300 m,450 m,600 mに,もち種子親を各63~69ポット (2~3 個体/ポット) で設置した.種子親には穂ばらみ期に冷水を処理し (冷水区,各不稔率25,43%),2007年のみ無処理 (不稔率26%) も設け,花粉親は無処理 (不稔率10~13%) とした.種子親の稔実種子からキセニア粒を目視で選別し,次にPCR分析により花粉親品種を判別した.種子親の交雑率は,隔離距離が短い順に2006年の冷水区で1.136,0.529,0.068,0.024%,2007年の冷水区で0.084,0.023,0.012,0.035%,無処理区で0.017,0.014,0.002,0%で,2007年では各距離とも無処理区に比べ不稔率が高い冷水区で交雑率が高く,また2007年の冷水区を除き長距離ほど交雑率が低下したが,最長600 mでも交雑が認められた.この長距離での交雑発生要因として,(1) 種子親と花粉親の出穂期の重複 (両年とも4~6日間),(2) 種子親の花粉親より高い不稔率,(3) うるち花粉源の大きい圃場面積 (花粉親圃場2.3 haの他,近接の同一品種2.7 ha,種子親と交雑が生じた他の品種が2方向に2.4 ha,2.9 ha),(4) 開花期間の風向 (70~79%は花粉親から種子親への方向) と大きな平均風速 (3.6~4.0 m/s) の4点が考えられた.
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© 2011 日本作物学会
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