日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
山形県庄内地域における2008年の開花期以降の冠水が ダイズの莢および品質に及ぼす影響
松田 裕之森 静香中場 勝藤井 弘志
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キーワード: 品質, R4~R5, ダイズ, 不稔莢, 冠水害
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2011 年 80 巻 2 号 p. 207-212

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抄録

山形県酒田市におけるダイズ生育期間中の豪雨日(100 mm 日-1以上)は2000年以降ほぼ2年に1回あり,それ以前と比較するとダイズ冠水被害の危険性が増加している.山形県庄内地域では,2008年8月14日から15日にかけて局地的な豪雨に見舞われ,ダイズでは冠水被害が発生したため,成熟期にダイズ品種 「リュウホウ」 における冠水害の被害調査を実施した.その結果,株当たり全莢数は調査地点による大きな差は認められず,いずれも株中位に着生する莢数が多く株の上下に正規分布する傾向を示したことから,冠水による落花・落莢の発生は少ないと推定された.また,推定冠水時間が長くなるほど不稔莢数と不稔莢比率が高く,着粒数が少なかった.なお,いずれの地点も小粒比率が高くかつ整粒比率が低く,推定冠水時間との関係は明確でなかった.株の着生位置別にみると,いずれの地点も下位部に着生した莢ほど不稔莢比率が高く,かつ小粒比率が高い傾向を示した.その理由として,株の下位部になるほど酸素不足の時間が長く,濁水による傷などの損傷程度が大きいこと,および冠水遭遇後下位葉から早期に落葉したことが要因と推察された.品質では,しわ粒・変質粒・皮きれ粒の発生により整粒比率が大きく低下したが,株の着生位置による明確な傾向は認められず,いずれの着生位置でも50%以下と低かった.以上のことから,本事例では品質低下を防ぐために冠水被害のない健全な大豆と分けて別刈り対応すべきと考えられた.

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© 2011 日本作物学会
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