抄録
前作のオオムギを登熟期に刈り敷き,不耕起でダイズを栽培するオオムギカバークロップ―不耕起ダイズ栽培には増収効果が認められるが,養分的な効果がその要因であることが示唆されている.その一つとして,ダイズのアーバスキュラー菌根菌(以下AM菌)感染率向上によるリン吸収の促進が考えられる.AM菌による生育促進効果の報告は,生育初期についてのものがほとんどだが,本研究では子実生産と関係の深い着莢期以降のダイズの生育,AM菌感染率,収穫期のリン集積量および根粒重についてカバークロップ―ダイズ栽培1作目および3作目の二つの圃場で調査を行い,AM菌がダイズ収量に及ぼす影響を解析した.その結果,1作目圃場では,ダイズ収量は単作区に比較してカバークロップ区で高かったが,3作目圃場では,両区間の差異は明らかでなかった.カバークロップ区では,1作目,3作目圃場ともに着莢期のAM菌感染率は高かった.葉色値は1作目圃場では子実肥大期から成熟始期まで単作区より高い傾向がみられたが,3作目圃場では開花始期および成熟始期のみで高かった.根粒重はカバークロップ区で高い傾向が認められた.これらのことから1作目圃場のカバークロップ区では,着莢期までAM菌感染率が高く維持されたことによるリン吸収の促進と,AM菌感染率の向上による根粒菌着生期間の拡大に伴う窒素吸収の増加が増収に貢献したと判断された.一方,3作目圃場におけるカバークロップ区では窒素が制限要因となって増収効果がみられなかったものと考えられた.