抄録
2004/2005年と2005/2006年に山口県山口市名田島の干拓農地におけるコムギ圃場358筆で,枯れ熟れ様登熟不良の発症程度を達観調査するとともに,成熟期における平均粒重と茎葉の糖含有率を調査した.枯れ熟れ様登熟不良は,両年とも,農林61号でニシノカオリよりも発症程度が高い圃場が多くみられた.また,枯れ熟れ様登熟不良は,開花期までに湿害があった圃場と湿害がなかった圃場のどちらでも発症したが,湿害があった圃場で発症程度が高い圃場が多くみられた.平均粒重は,両品種とも発症程度が高いほど軽かった.一方,糖含有率は,発症大と評価された圃場で高かった.枯れ熟れ様登熟不良の発症圃場や開花期までに湿害があった圃場は,1774年に農地完成した新開作地区では少なかったものの,1930年に農地完成した昭和開作地区では多かった.枯れ熟れ様登熟不良は,同じ品種を同じ圃場で作付けしても,必ずしも毎年続けて発症するとは限らなかった.農林61号の茎葉の糖含有率は,枯れ熟れ様登熟不良を発症した圃場で平均粒重との間に有意な負の相関関係がみとめられ,粒重の軽い子実は茎葉に同化産物を蓄積したまま生長を終えてしまったことが確認された.