日本作物学会紀事
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栽培
定植前リン酸苗施用がキャベツとトウモロコシの生育初期の乾物生産, 光合成,根の活性および養分吸収に及ぼす影響
渡邊 和洋新野 孝男村山 徹南條 正巳
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2011 年 80 巻 4 号 p. 391-402

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抄録
定植前リン酸苗施用による定植後の初期生育の促進効果について,キャベツとトウモロコシを供試し,乾物生産特性,光合成,根の生理活性と伸長,および無機養分吸収の面から調査,解析を行った.定植前リン酸苗施用により,両作物とも,リン酸処理直後の7~14日頃までは,生育の促進は認められなかったが,その後の1~2週間に純同化率(NAR)が高まることで,生育が促進された.このNARが向上する期間は,光合成速度も高くなった.光合成速度の増加には気孔コンダクタンスの増加が寄与していたが,トウモロコシでは葉身中のリン含有率の増加も重要な要因であった.無機養分の吸収については,リンとカリ含有量が高まり,キャベツでは下位葉でも高く維持された.また,処理液に含まれるリンやカリだけでなく,マグネシウムなどの他の必須養分の吸収が促進されることもあった.一方,呼吸速度や茎基部出液速度などの根の生理活性も高まる傾向が認められ,セル苗のキャベツでは根の伸長も促進された.以上の結果から,リン酸の定植前苗施用は,リンの吸収を高めることで,光合成および根の生理活性を高め,殊にキャベツでは根の伸長も促進することで活着を早め,茎葉への水と養分の供給を促進して高い光合成活性を維持し,定植後の初期生育を促進しているものと考えられた.
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© 2011 日本作物学会
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