抄録
寒冷地において酸化鉄コーティング種子を利用した水稲直播栽培法を確立する目的で,酸化鉄コーティング直播栽培における出芽・苗立ち,乾物生産性および収量性について,圃場で過酸化カルシウムコーティング直播栽培と2ヶ年比較した.酸化鉄コーティング直播栽培は,過酸化カルシウムコーティング直播栽培に比べて,播種直後の低温等により初期生育量が不足し,その結果,地上部乾物重,分げつ,LAI,窒素吸収量の増加が遅れた.そのために,穂数および総籾数が減少し,減収したと推察された.一方,播種直後の低温等で初期生育量を確保しにくい条件であっても,酸化鉄コーティング種子をより表面に播種した結果,初期生育量が増加した.そのために,その後の生育の遅れが緩和されて,減収程度も小さくなったと推察された.