日本作物学会紀事
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品質・加工
コシヒカリにおける胚乳割断面の白濁タイプが異なる乳白粒発生率の 登熟温度および炭水化物供給に対する反応性
塚口 直史山村 達也井上 裕則中川 博視村上 佳矢北 恵利佳
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2012 年 81 巻 3 号 p. 267-274

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抄録
胚乳割断面の白濁のタイプ別に乳白粒発生率の登熟温度および炭水化物供給能に対する反応性を明らかにすることを目的とした.水田で栽培したコシヒカリに対し,2008年には剪葉処理および株間引き処理を2010年には剪葉処理をそれぞれ穂揃期に与えた.2009年および2010年にはポット栽培したコシヒカリを温度勾配温室(TGC)で登熟させた.2010年は各温度区で剪葉処理を設け,対照区と比較した.これらのイネの玄米について穀粒判別器により乳白粒および白死米の発生率を調査し,さらに穀粒判別器で乳白粒および白死米と判定された玄米の割断面の白濁パターンを調査した.これらの粒の割断面における白濁パターンは,中心部が白濁するタイプ(中心型乳白粒)とリング状に白濁するタイプ(リング型乳白粒)の2つのタイプが多く発生した.リング型乳白粒に対しては剪葉処理や株間引き処理の効果が認められ,また穎果への炭水化物供給量を示す充填率との間に高い負の相関関係が認められた.また,リング型乳白粒は出穂後20日間の平均気温とは一定の関係は認められなかったが,中心型乳白粒より低い温度で発生した.一方,中心型乳白粒の発生に対しては剪葉処理や株間引き処理の効果は認められず,充填率との相関関係も認められなかった.中心型乳白粒は出穂後20日間の平均気温に対する反応性が高かったが,出穂後20日間の12時から15時の平均気温に対する反応性はより高まり,一日で最も高温となる時間帯の気温とより強く関係することが示唆された.
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© 2012 日本作物学会
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