抄録
乾燥地である中国新疆ウイグル自治区昌吉 (2007年,2008年) と石河子 (2008年) において,発酵鶏糞由来の腐植物質を初生葉展開期から開花始期にダイズに葉面散布し,生育と収量に及ぼす影響について調査した.腐植物質の処理により主茎長,主茎節数および分枝数への影響は認められなかったが,子実収量はいずれの年次・地区とも6~32%増大した.処理によって総開花数は増加しなかったが,個体当たりの莢数が増加し結莢率が増加した.粒肥大始期 (R5)~粒肥大盛期 (R6) の葉面積指数,個体群成長速度および純同化率には大きな差異はなかったが,粒肥大盛期 (R6)~成熟始期 (R7) の個体群成長速度および莢乾物重増加速度は処理によって大きくなった.CO2同化速度,光化学系 IIの量子収量およびSPAD値について調査したが,腐植物質の葉面散布処理による効果はいずれの形質にも認められなかった.以上のことから,腐植物質に含まれる植物ホルモン様の物質により結莢数が増加し,粒肥大盛期以降,莢への同化産物の転流が促された結果,収量が増大したものと考えられた.腐植物質の葉面散布処理は,中国乾燥地におけるダイズの増収効果をもたらす技術であることが認められた.