日本作物学会紀事
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81 巻, 3 号
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研究論文
栽培
  • 宮内 陽介, 礒田 昭弘, 李 治遠, 王 培武
    2012 年 81 巻 3 号 p. 259-266
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    乾燥地である中国新疆ウイグル自治区昌吉 (2007年,2008年) と石河子 (2008年) において,発酵鶏糞由来の腐植物質を初生葉展開期から開花始期にダイズに葉面散布し,生育と収量に及ぼす影響について調査した.腐植物質の処理により主茎長,主茎節数および分枝数への影響は認められなかったが,子実収量はいずれの年次・地区とも6~32%増大した.処理によって総開花数は増加しなかったが,個体当たりの莢数が増加し結莢率が増加した.粒肥大始期 (R5)~粒肥大盛期 (R6) の葉面積指数,個体群成長速度および純同化率には大きな差異はなかったが,粒肥大盛期 (R6)~成熟始期 (R7) の個体群成長速度および莢乾物重増加速度は処理によって大きくなった.CO2同化速度,光化学系 IIの量子収量およびSPAD値について調査したが,腐植物質の葉面散布処理による効果はいずれの形質にも認められなかった.以上のことから,腐植物質に含まれる植物ホルモン様の物質により結莢数が増加し,粒肥大盛期以降,莢への同化産物の転流が促された結果,収量が増大したものと考えられた.腐植物質の葉面散布処理は,中国乾燥地におけるダイズの増収効果をもたらす技術であることが認められた.
品質・加工
  • 塚口 直史, 山村 達也, 井上 裕則, 中川 博視, 村上 佳矢, 北 恵利佳
    2012 年 81 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    胚乳割断面の白濁のタイプ別に乳白粒発生率の登熟温度および炭水化物供給能に対する反応性を明らかにすることを目的とした.水田で栽培したコシヒカリに対し,2008年には剪葉処理および株間引き処理を2010年には剪葉処理をそれぞれ穂揃期に与えた.2009年および2010年にはポット栽培したコシヒカリを温度勾配温室(TGC)で登熟させた.2010年は各温度区で剪葉処理を設け,対照区と比較した.これらのイネの玄米について穀粒判別器により乳白粒および白死米の発生率を調査し,さらに穀粒判別器で乳白粒および白死米と判定された玄米の割断面の白濁パターンを調査した.これらの粒の割断面における白濁パターンは,中心部が白濁するタイプ(中心型乳白粒)とリング状に白濁するタイプ(リング型乳白粒)の2つのタイプが多く発生した.リング型乳白粒に対しては剪葉処理や株間引き処理の効果が認められ,また穎果への炭水化物供給量を示す充填率との間に高い負の相関関係が認められた.また,リング型乳白粒は出穂後20日間の平均気温とは一定の関係は認められなかったが,中心型乳白粒より低い温度で発生した.一方,中心型乳白粒の発生に対しては剪葉処理や株間引き処理の効果は認められず,充填率との相関関係も認められなかった.中心型乳白粒は出穂後20日間の平均気温に対する反応性が高かったが,出穂後20日間の12時から15時の平均気温に対する反応性はより高まり,一日で最も高温となる時間帯の気温とより強く関係することが示唆された.
  • 二瓶 直登, 山下 伸夫
    2012 年 81 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    有機ダイズを原料としている加工業者は,生産農家から直接取引していることも多く,被害粒の混入割合が高い場合もある.そこで,ダイズ (品種タチナガハ) の被害粒 (紫斑粒,吸汁害粒,黒斑粒,食害粒) が豆腐加工適性 (主に色と固まりやすさ) に与える影響と,豆腐加工適性を損なわない被害粒の混入割合を検討した.紫斑粒は,豆腐の固まりやすさや味には影響しないものの,種皮が紫色であるため,豆腐の色 (明るさや赤み) に影響を与えた.紫斑粒の混入が25%未満なら赤みも整粒と同等になるため,整粒に対する紫斑粒の混入割合は25%未満にすべきと考えられる.吸汁害粒,黒斑粒で作製した豆腐は,色,破断応力,官能評価とも整粒ダイズで作製した豆腐と同等であった.したがって,吸汁害,黒斑粒の混入は本試験で検討した豆腐加工適性には大きな影響はないと考えられる.食害粒は整粒ダイズと比較して,吸水率が高く,浸漬液への固形流出率が増加した.また,豆乳のタンパク質とpHは低下し,豆腐の破断応力が塩化マグネシウム濃度0.3%では増加,0.5%では低下した.食害粒は主に豆腐の固まりやすさや色に影響するものの,混入割合が10%未満なら整粒ダイズと同等になるため,整粒に対する食害粒の混入割合は10%未満にすべきと考えられた.
  • 山口 弘道, 吉永 悟志, 白土 宏之, 神田 英司, 福嶌 陽, 福田 あかり, 長田 健二, 浅野 真澄, 八島 由美, 三上 雄史, ...
    2012 年 81 巻 3 号 p. 281-291
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    東北地域の低アミロース米生産において,DVR法による生育予測モデルに基づく白米アミロース含有率の推定法を用いて,玄米の顕著な白濁が少ない栽培適地・適作期を推定する方法について検討した.3県での作期移動試験の結果から,低アミロース米品種の白米アミロース含有率は,移植,直播栽培を通して,品種毎に登熟気温との間に高い負の相関関係が見られ,「スノーパール」 と 「たきたて」 では,ほぼ同じ回帰式が,「里のゆき」 では回帰係数の絶対値が小さい回帰式が得られた.全品種込みで白米アミロース含有率が10%を下回ると玄米の顕著な白濁が生じたことから,顕著な白濁の少ない低アミロース米の白米アミロース含有率の目標値を10~15%とした.作期移動試験における日平均気温と出穂期データに基づき,品種毎にDVR法による出穂予測モデルを作成した.出穂予測モデルと,登熟気温に対する白米アミロース含有率の回帰式により,移植,直播日から白米アミロース含有率をRMSE=0.81~1.67%の精度で推定することができた.この白米アミロース含有率推定法により,低アミロース米において顕著な白濁が少ない玄米を生産するための,平年の気象条件における栽培適地や適作期を推定することができた.さらに,玄米の白濁が生じやすい品種では,移植栽培と直播栽培との適切な組み合わせにより栽培適地や適作期を拡大できることが示唆された.
  • 沖山 毅, 山口 昌宏, 五月女 敏範, 長嶺 敬, 河田 尚之, 高山 敏之
    2012 年 81 巻 3 号 p. 292-298
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    食用・焼酎用としても流通しているビール大麦において,発生が多いと精麦品質の面から問題となる砕粒について,その発生要因とホルドインドリン遺伝子型の違いによる影響を解析した.生産力検定試験に供試した品種・系統を用いて砕粒発生要因を解析すると,砕粒率は原麦硬度(r=–0.608**)と粒重(r=0.588**)で相関が認められ,砕粒率は原麦硬度が低く,粒重が重いほど高くなる傾向にあった.このことから低砕粒率系統を選抜することを目的として,原麦硬度と粒重を変数とした砕粒率を推定する重回帰式を作成した.次に,回帰式の選抜効果を検証するために後代系統のホルドインドリン遺伝子型と精麦関連品質との関係を解析した.ホルドインドリン遺伝子Hinb-2b系統はHinb-2a系統に比べて原麦硬度が高く,搗精時間は長く,砕粒率は低く,白度が低いことが確認された.回帰式を後代系統に適用すると,Hinb-2a型系統群では,2ヵ年とも約75%の割合で砕粒率の低い系統を選抜でき,遺伝率は高く,砕粒率の選抜効果が大きいことが認められた.一方Hinb-2b型系統群では,約70%の割合で砕粒率の低い系統を選抜できたが,遺伝率は低く,選抜効果は小さいと考えられた.今後,食用・焼酎用に適したビール大麦品種の育成を図るには,Hinb-2a型に回帰式を用いて一次選抜を行い,砕粒率の低いものを選抜するか,Hinb-2b型を選抜し,搗精時間が短く,白度の高い系統を選ぶことが有用であると考えられた.
作物生理・細胞工学
  • 薮田 伸, 箱山 晋, 稲福 さゆり, 福澤 康典, 川満 芳信
    2012 年 81 巻 3 号 p. 299-308
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    短日日長が水稲の生育,特に出葉転換点と出葉速度に与える影響を明らかにするために,ジャポニカ,インディカを含む8品種を自然日長および10時間日長条件で栽培した.移植日から止葉展開日までの出葉経過を2直線で近似し,その交点で表される出葉転換点と,各直線の傾きで表される出葉速度に対する日長と品種の影響を調査した.品種,処理,年次を要因とした3元配置分散分析の結果,交互作用は認められたものの,出葉転換点は短日処理により短縮されることが示された.また出葉転換点は早生品種で早く,晩生品種で遅いこと,止葉展開日との間に有意な正の相関関係が認められたことから,早晩性と関係していることが示唆された.出葉転換点と幼穂形成始期は同時期に認められることはなかったが,両者の間に有意な正の相関関係が認められた.出葉転換点以前 (L1)・以降 (L2) の出葉速度についても同様に3元配置分散分析を行ったところ, L1の出葉速度に対する短日処理の影響はコシヒカリやRayadaなどに限定されていたのに対し, L2ではTepi,Miritiを除く6品種において10時間日長区は自然日長区より有意に大きいことが明らかとなった.このことから,出葉転換点以降に出葉速度は短日処理の影響を受けやすくなることが示された.また品種間差異はL1,L2ともに認められ,特に早生で大きく,晩生で小さい傾向が認められた.一方で全生育期間を通して出葉速度が小さいMiritiのような品種も存在した.以上の結果から,出葉転換点はイネの体内生理的変化の指標となる可能性が示唆された.
収量予測・情報処理・環境
  • 小田 正人
    2012 年 81 巻 3 号 p. 309-316
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    バッファーチャンバー法は,閉鎖式チャンバーを測定チャンバーとバッファーに分割し,ガスを循環させ,バッファーのガス濃度変化を測定するガス収支測定法である.センサーの応答速度や測定物のガス放出速度に合わせた測定時間の調整が可能なため,幅広い対象を高精度に測定できるとされる.しかしながら,バッファーチャンバー法には測定チャンバーとバッファーのガス濃度に応答ラグが生じるという構造上の問題がある.そこで,センサーの応答ラグ,バッファーおよびチャンバーのガス濃度変化を,ガスの置換過程として記述した数理モデルを用い,バッファー容積のチャンバー容積に対する倍率 (バッファー倍率),チャンバー内のガスの1秒当りの置換率 (置換率) を変化させて,測定装置の応答特性を調べた.その結果,測定時間の調整機能が発揮されるためには,バッファー倍率に見合った置換率が必要であることが分かった.また,実際に測定装置を作成し,作物の光合成を測定することによりその性能を検証し,装置の設計指針を作成した.
  • -地域スケールでの実践的応用に向けて-
    境谷 栄二, 井上 吉雄
    2012 年 81 巻 3 号 p. 317-331
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    近年,全国の米産地では,リモートセンシングで推定した玄米タンパク含有率 (以下,玄米タンパクと呼ぶ) を活用して,栽培指導や区分集荷が試みられるようになってきた.しかし,特に本州以南では推定精度が不十分で実用化が進んでいない場合が多い.本研究では推定精度および実用性の向上を目的として,青森県津軽中央地域の水田地帯100 km2を対象に航空機ハイパースペクトルで複数年の観測実験を行い,玄米タンパク推定の誤差要因をNDSI (正規化分光反射指数) を用いて分析した.地上で調査した葉色と玄米タンパクは,年次を通して密接な関係があった.しかし,反射スペクトルからの推定力の傾向は,葉色と玄米タンパクで違いがみられた.観測時の葉色に対しては赤と緑の双方の波長で推定力が高いが,収穫時の玄米タンパクに対しては赤の波長では大きく劣った.これは赤の波長が生育ステージの変化に対する感受性が強いことに起因している.この影響を分析するため,生育ステージの変動を施肥条件と田植時期の違いによる部分に分割したモデルを提示した.施肥条件は玄米タンパクと強く関係するのに対し,田植時期はほぼ無関係である.そのため,田植時期に起因する生育ステージの変動が大きい場合は,玄米タンパクの推定精度が低下しやすい.また,観測時期が早いほど,田植時期に起因する変動の影響が相対的に大きくなることも精度低下の一因となる.したがって,玄米タンパクの推定には,従来のNDVI (=NDSI[赤,近赤外]) に替わり,NDSI[緑,近赤外] を用いることで,生育ステージによる影響が緩和され,精度の低下を軽減できる.
研究・技術ノート
  • 浜地 勇次, 宮崎 真行, 坪根 正雄, 大野 礼成, 小田原 孝治
    2012 年 81 巻 3 号 p. 332-338
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    2010年の夏は全国的に猛暑で,水稲の登熟期間における気温が記録的な高温となり,多くの地域で玄米品質が著しく低下した.この登熟温度 (出穂期後20日間の平均気温) が28℃を超える高温年においても,福岡県内の 「元気つくし」 は1等米比率が90%以上であり,しかも土壌の肥沃度や前年の作付けが異なる圃場においても白未熟粒の発生が少なく,玄米品質が優れていた.また,「元気つくし」 は,高温耐性が弱の 「つくしろまん」 と比較して,登熟温度がほぼ同じで,1穂内の着粒構造が似通っているにもかかわらず,いずれの着粒位置においても白未熟粒の発生が少ない傾向にあった.これらの結果は,「元気つくし」 が有する高温耐性は安定して優れており,そのことには穂の着粒構造以外の生理的要因が関与していることを示唆している.
  • 石川 哲也
    2012 年 81 巻 3 号 p. 339-342
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    飼料用米としての利用が期待されるべこあおば,夢あおば,モミロマンおよび北陸193号を供試して移植栽培試験を実施し,粗玄米収量や乾物生産をタカナリと比較した.2008年から2010年まで,茨城県つくばみらい市で5月中旬に稚苗を機械移植し,高度化成として7 g m-2,被覆尿素として8.2 g m-2の窒素を,いずれも基肥として施用した.夢あおばとべこあおばの出穂期はタカナリより約10日早く,モミロマンと北陸193号は約4日遅かった.モミロマンの稈長はタカナリより有意に長く,2009年には倒伏が生じた.粗玄米重は各試験年次ともタカナリがもっとも大きく,玄米千粒重が大きいべこあおばも2年続けて800 g m-2を上回った.モミロマンの粗玄米重は,2009年を除いてタカナリより有意に小さかった.出穂期の抜き取り乾物重 (全乾物重) は,生育期間の長い中生品種の方が大きかったが,出穂期から成熟期まで (登熟期間) の個体群成長速度 (CGR) は,早生品種の方がやや高く,2008年と2009年の成熟期全乾物重には有意な品種間差は認められなかった.タカナリと北陸193号は,登熟期間の茎葉乾物重の増減から推定した転流量が大きく,再蓄積は認められなかった.再蓄積が認められたべこあおばや夢あおばは,籾数を増加させれば増収が期待できると判断された.モミロマンは転流・再蓄積量の年次間の変動が大きく,全乾物重の大きさが利点となる稲発酵粗飼料としての利用が適していると推察された.
  • 大澤 実, 高橋 利和, 菅谷 隆幸
    2012 年 81 巻 3 号 p. 343-348
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    北関東地域において農林61号に替えて普及が図られている秋播性コムギ品種さとのそらの生育・収量特性を,農林61号との比較を通して明らかにしようとした.本研究では通常の生育・収量調査に加え,幼穂伸長および穂重増加についてロジスティック式に当てはめ,その特徴をパラメーターに要約し比較検討を試みた.さとのそらの茎数推移をみると,農林61号と比較して茎数増加曲線の立ち上がりが急激で最高茎数が多く,穂数を確保しやすい秋播性品種の特徴を示した.さとのそらは,農林61号と幼穂形成始期が同じであるにもかかわらず,出穂期は農林61号よりも4日早かった.これはロジスティック式による解析によると,積算温度に対する幼穂伸長曲線の立ち上がりが早く,伸長速度が速いためであった.出穂期後の積算温度と穂重増加との関係をみると,さとのそらと農林61号のパターンはほぼ一致し,違いは認められなかった.両品種ともに,子実が生理的成熟期に到達するまでに出穂期後積算温度で737℃を要した.収量関連形質では,さとのそらは一穂小穂数が少なく一穂粒数も少なめであったが,千粒重が大きく穂数も多いことから,単位面積当たりの子実重は有意に重かった.収量関連形質と子実重との相関係数から,さとのそらの単位面積当たり子実重は穂数に大きく依存していることが示された.
  • 守田 和弘, 松島 知昭, 山口 琢也, 齋藤 綾乃, 古畑 昌巳
    2012 年 81 巻 3 号 p. 349-356
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    高温登熟回避を目的として晩植したコシヒカリにおいて,密植栽培が生育,収量および品質に及ぼす影響を調査するとともに,晩植・密植栽培導入の有効性について評価した.その結果,穂数は栽植密度が高いほど多くなり,収量は18.2株/m2区に比べて21.2株/m2区および24.2株/m2区で高かった.また,登熟期間に日射量が少ない年次においては,栽植密度が高いほど収量が増加した.外観品質は晩植・密植栽培を行うことで2ヶ年を通して高水準となり,登熟期間に日射量が多い年次でより整粒歩合が高かった.これらのことから,晩植条件下における密植栽培は収量・品質の安定化に有効であり,加えて,登熟期間の高温を回避しつつ日射量を確保することが収量・品質のさらなる安定化に有効であることが示唆された.
連載ミニレビュー
  • 若山 正隆, 青木 直大
    2012 年 81 巻 3 号 p. 357-362
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    近年,網羅的・包括的な解析であるオミックス解析では,DNA,RNAに加えて蛋白質,代謝物等も解析対象になってきている.アミノ酸やカルボン酸などに代表される極性低分子のメタボローム解析では,分子選択性の高い分離・検出が可能なためキャピラリー電気泳動-質量分析計 (CE-MS) がしばしば使用される.これまでCE-MSによるアミノ酸類とカルボン酸類の測定では,各々異なったキャピラリーや泳動液が必要であった.著者らは,アミノ酸類とカルボン酸類を同一のキャピラリーと泳動液で測定することを可能にし,一組のCE-MS装置で低コストかつ効率的に測定する方法を開発してきた.本稿では,CE-MSを用いた極性低分子のメタボローム解析について著者らの確立した方法を解説するとともに,実際の植物試料での代謝解析の事例を紹介する.
  • 福岡 峰彦, 吉本 真由美
    2012 年 81 巻 3 号 p. 363-371
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/06
    ジャーナル フリー
    気温は作物の気象反応を解析する上で最も基本的な説明変数のひとつであるが,観測方法に細心の注意を払わなければ,その観測値は容易に真値から乖離しうる.そのため,栽培試験の結果から気温との汎用性のある関係を導き出すには,気温の観測精度に悪影響を及ぼす各種要因を理解し,それらを適切に排除する必要がある.そこで本稿では,作物の圃場栽培試験において気温を観測する際の留意点を,実際の観測例を交えて解説する.加えて,気象官署やAMeDASにおける一般気象観測で得られる気温との整合性を考慮した,群落上気温の標準観測高度を提案する.
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