食用・焼酎用としても流通しているビール大麦において,発生が多いと精麦品質の面から問題となる砕粒について,その発生要因とホルドインドリン遺伝子型の違いによる影響を解析した.生産力検定試験に供試した品種・系統を用いて砕粒発生要因を解析すると,砕粒率は原麦硬度(r=–0.608**)と粒重(r=0.588**)で相関が認められ,砕粒率は原麦硬度が低く,粒重が重いほど高くなる傾向にあった.このことから低砕粒率系統を選抜することを目的として,原麦硬度と粒重を変数とした砕粒率を推定する重回帰式を作成した.次に,回帰式の選抜効果を検証するために後代系統のホルドインドリン遺伝子型と精麦関連品質との関係を解析した.ホルドインドリン遺伝子
Hinb-2b系統は
Hinb-2a系統に比べて原麦硬度が高く,搗精時間は長く,砕粒率は低く,白度が低いことが確認された.回帰式を後代系統に適用すると,
Hinb-2a型系統群では,2ヵ年とも約75%の割合で砕粒率の低い系統を選抜でき,遺伝率は高く,砕粒率の選抜効果が大きいことが認められた.一方
Hinb-2b型系統群では,約70%の割合で砕粒率の低い系統を選抜できたが,遺伝率は低く,選抜効果は小さいと考えられた.今後,食用・焼酎用に適したビール大麦品種の育成を図るには,
Hinb-2a型に回帰式を用いて一次選抜を行い,砕粒率の低いものを選抜するか,
Hinb-2b型を選抜し,搗精時間が短く,白度の高い系統を選ぶことが有用であると考えられた.
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