日本作物学会紀事
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栽培
中国産多収性水稲品種の窒素吸収と施肥窒素吸収率に及ぼす 緩効性肥料の施用効果
小久保 敏明宮崎 彰吉田 徹志山本 由徳井上 洋子岡崎 秀昭岩永 泰大黒田 翔平居 静王 余龍
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2012 年 81 巻 4 号 p. 424-431

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抄録

中国における水稲の多収穫多施肥栽培において施肥窒素(N)吸収率の向上を目的とし,多収性水稲品種のN吸収に及ぼす緩効性肥料の施用効果を調査した.緩効性肥料の施用は,中国産多収性品種の揚稲4号(YD)および武育粳3号(WY)において幼穂形成期までの肥料由来N吸収量を有意に増加させた.この結果,施肥N吸収率が有意に増加し,YDでは成熟期N含有量の有意な増加も認められた.YDは幼穂形成期から出穂期にかけてのN吸収量が高かったが,WYはより早い時期のN吸収量が高く,YDに対してはWYより肥効の長い緩効性肥料の施用が有効であると推察される.YDの施肥N吸収率は,シグモイド型緩効性肥料(S区)>リニア型緩効性肥料(L区)>塩安の分施(C区)の傾向があり,施肥N量の増加に伴いC区では有意に増加したが,S区およびL区では有意な変化は認められなかった.以上のことから,YDへの緩効性肥料,特にシグモイド型肥料の施用は施肥N吸収率が高いこと,それにより施用量の削減が可能であることから,環境負荷の軽減に有効であると考えられた.

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© 2012 日本作物学会
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