抄録
稲発酵粗飼料向けに育成された茎葉型早生品種のたちはやてを,茨城県つくばみらい市において,栽植密度15.2株 m-2に設定した疎植条件で2011年から2013年まで飼料用大麦収穫後の6月中旬に移植栽培し,生育特性を夢あおば・ホシアオバと比較した.化成肥料と被覆尿素肥料を併用して,9.8 g m-2の窒素を全量基肥として施用した.たちはやての出穂期は夢あおばより遅く,ホシアオバ並みであったが,登熟は速やかに進行し,出穂後18~23日で50%程度の籾が黄化する黄熟期に達した.黄熟期は夢あおばより約1週間,ホシアオバより約2週間早かった.たちはやての稈長は他の品種より長かったが,倒伏は生じなかった.たちはやての茎数は他の品種よりやや少なく経過したが,黄熟期の穂数には有意な品種・系統間差は認められなかった.生育途中におけるたちはやての乾物重と対照品種との差は小さく,黄熟期の地際刈り乾物重にも有意差は認められなかった.また,たちはやての地際刈り乾物に占める穂の比率は40%未満で,対照品種より低かった.黄熟期の全刈り乾物収量はたちはやてとホシアオバでほぼ同程度であり,地際刈り乾物の可消化養分総量の推定値も,ほぼ同程度となった.以上の結果から,たちはやては,ホシアオバより生育期間の短い品種を求める周年粗飼料生産体系に適していると判断された.