日本作物学会紀事
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栽培
鶏糞堆肥の多量施用が飼料用水稲品種モミロマンの窒素吸収および 乾物生産に及ぼす影響
有澤 岳信岡 誠治玉井 富士雄福山 正隆
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2015 年 84 巻 2 号 p. 129-139

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抄録
水田に鶏糞堆肥 (N:2.1%) を施用した慣行堆肥区 (1.8 tDM/10 a) および多量堆肥区 (3.6 tDM/10 a) ならびに比較として化学肥料区を設け, 2009年 (堆肥連年施用3年目) および2010年に飼料用水稲品種モミロマンおよび日本晴を栽培した.その中で,堆肥施用がモミロマンの多収要因,特に登熟期間の窒素吸収および乾物生産に及ぼす影響について検討した.その結果,モミロマンは日本晴と比較し,堆肥および化学肥料の施用に拘わらず,地上部乾物重および全窒素含量が著しく大きかった.また,穂重増加には,登熟期間中の同化量の増加が大きく寄与していることが明らかになった.多量堆肥区において,モミロマンは,葉面積および葉身の全窒素濃度が増加し,登熟期間中もそれらが高く維持されていた.さらに,モミロマンは日本晴に比べ,草丈が高く,生葉面積が一部に集中せず,上層から下層まで幅広く分布する構造であったため,下層の相対光強度の低下を抑える良好な受光態勢を維持していたと推察された.そのため,モミロマンは,日本晴より葉面積は小さいが,登熟期間中の葉面積あたりの乾物生産効率が高く,乾物生産量も日本晴より大きくなった.以上より,モミロマンは,鶏糞堆肥の多量施用により粗籾数を増加させるとともに登熟期間中の全窒素含量および乾物生産効率を高く維持したことで,粗籾重および粗蛋白質の増加を図ることが可能であった.
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© 2015 日本作物学会
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