日本作物学会紀事
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栽培
コムギの開花期地上部窒素蓄積量は子実タンパク質含有率と開花期窒素追肥の 子実タンパク質含有率向上効果に影響する
島崎 由美赤坂 舞子渡邊 好昭大下 泰生松山 宏美平沢 正
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2015 年 84 巻 2 号 p. 140-149

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抄録
製パン用コムギの子実タンパク質含有率を高める方法として,開花期前後の窒素追肥が有効である.開花期窒素追肥の子実タンパク質含有率向上効果には,開花期地上部窒素蓄積量の違いが影響する可能性が示唆されている.本研究では,開花期地上部窒素蓄積量がコムギの子実タンパク質含有率と開花期窒素追肥の子実タンパク質含有率向上効果に及ぼす影響を検討する目的で,成熟期の穂の乾物重と窒素蓄積量を開花前蓄積分と開花後同化分に分けて解析した.水田と畑の2圃場で比較した結果,子実タンパク質含有率は水田に比べて畑で高く,開花期窒素追肥に対する子実タンパク質含有率の増加割合は水田が畑よりも高かった.水田に比べ畑では開花期地上部窒素蓄積量が多く,穂の開花前蓄積窒素量が多いことによって成熟期穂窒素蓄積量が多かった.次いで,同一の畑圃場に生育するコムギにおいて,基肥の種類と量,茎立期追肥量を変えることで開花期地上部窒素蓄積量を変え,開花期追肥が子実タンパク質含有率に及ぼす影響を検討した.その結果,施肥量が多い区で開花期地上部窒素蓄積量は多く,子実タンパク質含有率が高くなった.開花期地上部窒素蓄積量が多い区では,穂の開花前蓄積窒素量が多く,開花期追肥に対する子実タンパク質含有率の増加割合は小さくなった.以上の結果から,開花期地上部窒素蓄積量は,開花前に茎葉に蓄積され開花後に穂に転流する窒素の多少を通じて,子実タンパク質含有率と開花期窒素追肥の子実タンパク質含有率向上効果に影響することが明らかとなった.
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© 2015 日本作物学会
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