2010 年 71 巻 3 号 p. 855-858
症例は64歳,男性.9カ月前に胃癌に対して胃全摘術(Roux-en-Y再建)を施行された.10日前より軽度の腹痛と便秘が出現し,当院外来を受診した.身体所見にて上腹部に軽度の圧痛を認めたが,腹膜刺激症状はなく,血液検査でも軽度の炎症反応の上昇を認めるのみであった.腹部レントゲンにて右側に偏在する大腸ガスを認め,亜イレウスと診断され,緊急入院となった.造影CT検査で右側結腸の拡張と壁の肥厚した小腸を認め,血管の渦巻き様構造を認めた.以上より内ヘルニアの診断にて,手術を施行した.開腹すると,結腸前経路で再建した挙上空腸と横行結腸との間隙から小腸ほぼ全域が入り込んでいた.腸管の絞扼や壊死は認められず,腸管を還納し,ヘルニア門を閉鎖して手術を終了した.術後腹部症状は軽快し,退院となった.胃癌術後の内ヘルニアの報告は少なく,文献的考察を加え,報告する.