日本作物学会紀事
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北海道と兵庫県の酒造好適米における農業特性と酒造適性の比較
田中 一生平山 裕治丹野 久
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2015 年 84 巻 2 号 p. 182-191

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抄録
北海道と兵庫県の酒造好適米について農業特性と酒造適性を比較し,今後の北海道の酒造好適米に改善が必要な酒造適性を明らかにした.北海道の酒造好適米として 「吟風」,「彗星」,「きたしずく」 を,兵庫県の酒造好適米として 「山田錦」,「五百万石」,「兵庫北錦」 を用いた.農業特性と酒造適性の比較には,それぞれ水稲奨励品種決定基本調査のデータと醸造用原料米全国統一分析結果を利用した.北海道の酒造好適米は兵庫県の酒造好適米に比べ,優点として,m2当たり穂数が多いため玄米収量が多く,稈長が短いため倒伏程度が小さく,腹白率が低いため玄米品質が高く,砕米率が低かった.一方,欠点として,千粒重が軽く,20分吸水率と蒸米吸水率が低く,粗タンパク質含有率が高かった.なお,北海道の酒造好適米は兵庫県の酒造好適米に比べカリウム含有率が低く,無効精米歩合,120分吸水率,直接還元糖,フォルモール態窒素および心白発現率には,両地域間に明確な差が認められなかった.北海道の酒造好適米の粗タンパク質含有率が兵庫県の酒造好適米に比べ高かった要因として,窒素施肥量が多かったことが考えられた.北海道の酒造好適米の評価を高めるためには,千粒重を増加させ,20分吸水率と蒸米吸水率を高め,粗タンパク質含有率を低下させることが必要である.
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© 2015 日本作物学会
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