日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
兵庫県における酒米品種「山田錦」の玄米品質と気温との関係
池上 勝藤本 啓之小河 拓也三好 昭宏矢野 義昭土田 利一平川 嘉一郎
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2015 年 84 巻 3 号 p. 295-302

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抄録
兵庫県の酒米品種「山田錦」の温暖化条件下における品質向上対策の参考となる知見を得るために,「気象感応調査」の10カ年のデータを用いて「山田錦」の玄米品質と気温との関係を検討した.検査等級は精玄米歩合と強い相関が認められ,精玄米歩合が高いと検査等級は優れる傾向が認められた.検査等級が「特等」以上になる精玄米歩合は概ね85%以上であった.検査等級や精玄米歩合は登熟期間の日平均気温と有意な相関が認められ,気温が高いと検査等級や精玄米歩合は低下する傾向が認められた.特に,出穂後11日目~20日目までの登熟期中期の日平均気温との相関係数が大きかった.検査等級が「特等」以上になる出穂後11日目~20日目の日平均気温は稚苗で23.4℃以下,中苗で24.1℃以下と推測され,中苗は稚苗より高温条件下でも品質が優れる傾向が認められた.千粒重は,出穂後11日目~20日目までの気温と有意な負の相関が認められた.乳白米と背白米は出穂後11日目~20日目の登熟期間の日平均気温が26.5℃以上になると急増した.また,背白米率は玄米タンパク質含有率と有意な負の相関が認められ,玄米タンパク質含有率が高い場合は,背白米の発生が低くなることが認められた.
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© 2015 日本作物学会
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