日本作物学会紀事
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栽培
温暖地西部における飼料イネ種子の土中埋設時期が越冬後の発芽力に及ぼす影響
大平 陽一佐々木 良治
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2015 年 84 巻 4 号 p. 345-350

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抄録

収穫時に脱落した飼料イネ種子の漏生抑制を目的に,時期別の種子埋土試験を2ヶ所で行った.広島県福山市の水田(標高2 m,以下,福山)では,「クサノホシ」の種子を10月中旬に圃場表面に置床し,10月中旬~下旬に埋設すると,越冬後の発芽指数(越冬後に発芽能力を有する種子含有率)は11月中旬~12月上旬の埋設処理および圃場表面越冬処理より著しく低下した.また,福山では「クサノホシ」より種子休眠の深い「中国飼189号」でも10月中旬~下旬の埋設処理で越冬後の発芽指数は低くなったが,その低下程度は「クサノホシ」より小さかった.福山における越冬後の発芽指数と越冬処理後に調査した発芽痕のある種子の割合とは負の相関関係にあったことから,秋季の種子埋設で発芽する,もしくは発芽の生理代謝が進み,越冬中に死滅して越冬後の発芽指数が低下したと考えられた.また,発芽痕のある種子の割合は,下限温度を10℃として地温および気温に基づく年内の有効積算温度がそれぞれ130および100℃・日以上を得られる場合に高止まりし,これらの温度が得られる時期の秋耕で漏生抑制を図れる可能性が示された.高標高地の島根県飯南町の水田(標高425 m,以下,飯南)でも「クサノホシ」と「中国飼189号」は圃場表面越冬処理よりも10月中旬の埋設処理で越冬後の発芽指数が低下した.しかし,「クサノホシ」ではその程度が福山よりも小さかった.また,飯南では,越冬後の発芽指数が低くても必ずしも発芽痕のある種子は福山ほど多く含まれていなかった.このような地域間差異は,秋季以降の降水量や地温の差異に起因すると推察され,適切な飼料イネ品種の選定と耕起時期の設定が必要と考えられた.

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