北海道の秋まきコムギでは,これまでイネ・ムギの分げつ性を示した同伸葉同伸分げつ理論との差異を検討したことがなく,分げつ出現様式も知られていない.そこで本報では,北海道の基幹品種きたほなみの分げつ出現様式を3ヵ年調査し,理論値との差異を検討した.また,品種による差異を検討するためにゆめちから,つるきちの分げつ出現様式も調査した.きたほなみでは,同伸分げつの規則性と比較し,1次分げつではT1に差はなかったがT2,T3はやや早く,T5以降は遅れることが明らかとなった.2~4次分げつでは,T13を除いた分げつ節位で出現が早く,2次分げつでは0.5~0.7葉,3次・4次分げつでは0.7~1.3葉早く出現した.また,分げつ出現後の葉齢の増加はいずれの分げつ節位でも主茎葉齢の増加とほぼ等しく,同伸葉の規則性が認められた.また,品種間で比較すると,いずれの品種も同伸分げつの規則性より出現は早かったが,つるきちは生育初期の分げつ節位できたほなみ,ゆめちからより有意に遅れた.以上のことから,北海道の秋まきコムギでは同伸分げつの規則性との不一致が認められ,生育初期から分げつの出現が早いことが明らかとなった.また,品種によって生育初期の分げつ出現に早晩がみられたが,北海道の秋まきコムギでは越冬前の出現分げつで穂数が決定され,収量も変動することから,越冬前の分げつ出現の早晩に着目することで,多収品種の効率的選抜が可能になると推察した.