2011 年 17 巻 4 号 p. 159-164
症例は56歳男性.アルコール性肝硬変,脾腎Shuntによる高アンモニア血症と肝性脳症にて入退院を繰り返していた.前医にてバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を試みたが,脾腎Shunt径が大きく治療が不可能なため,外科治療目的にて当院紹介となった.入院時身体所見で脳症(-),黄疸(-).入院時採血で血中アンモニア160μg/dl,血小板8.5万/μl,ICG15分値78.4%,Child-Pugh分類Grad B(8点).腹部造影CTでらせん状に蛇行する最大径34mmの巨大Shuntを認め,流入血管は脾静脈,流出血管は左腎静脈であった.脾腎Shunt血流減量,および肝血流改善の目的で脾摘および門脈圧モニタリング下に調節的Shunt binding術を施行した.術中門脈圧は開腹時12mmHg,脾摘後12mmHg,調節的Shunt binding術後15mmHg(圧上昇率25%)であった.術後から現在まで肝性脳症は一度も認められず,術後1年3カ月目で外来通院中である.