抄録
三重県在来のダイズ品種である「美里在来」は,成育中に地上部がしばしば過繁茂して子実生産に悪影響を及ぼす.本品種の栄養成長が旺盛な原因を明らかにするため,成育初期に湿潤土壌条件(湿潤区)と乾燥土壌条件(乾燥区)に2週間晒す土壌水分処理を3ヵ年行い,開花前の草丈,乾物重および葉面積の変化をフクユタカと比較した.土壌水分処理2週間後の美里在来の茎長は両処理区でフクユタカよりも長く,乾燥土壌条件下では短かった美里在来の小葉身長も湿潤土壌条件下ではフクユタカと同等に長くなり,結果として湿潤区の美里在来の草丈はフクユタカよりも長くなった.葉面積は,乾燥土壌条件下では両品種ともに同等であったが,湿潤土壌条件下では主茎節数と平均比葉面積の増加によって美里在来がフクユタカに比較して大きくなった.土壌水分処理2週間後の全乾物重と土壌水分処理期間中の個体成長速度,相対成長率および純同化率に有意な品種間差はみられなかったが,湿潤区の美里在来の土壌処理2週間後のSPADはフクユタカに比較して低く,湿潤土壌条件下では葉肉組織の光合成能力がフクユタカに比較して劣ることが示唆された.