日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
除染後水田における玄米への放射性セシウムの移行係数
藤村 恵人江口 哲也松波 寿弥太田 健村上 敏文石川 哲也牧野 知之赤羽 幾子神谷 隆青野 克己中 達雄奥島 修二
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2016 年 85 巻 2 号 p. 211-217

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抄録

東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質を除去するための除染作業が進められている福島県内において,異なる方法の除染が実施された農家圃場で水稲を栽培し,生育や収量への影響と,半減期が長く,放出量が多かった放射性セシウムの吸収抑制効果を調査した.あわせて,吸収抑制対策として指導されているカリ肥料の上乗せ施用やゼオライト施用などの効果も検証した.除染した区画の試験区は反復込みで合計47区,除染していない区画の試験区は同54区である.除染により土壌の放射性セシウム濃度は減少したが,その程度は圃場により異なった.ゼオライトを施用した試験区では,収穫時にも土壌の交換性カリ含量が高く,施用翌年にも同様の傾向が認められた.除染により土壌の可給態窒素含量が低下した場合は,窒素増施などの対策が必要と判断された.すべての試験区において,玄米の放射性セシウム濃度は一般食品の基準値である100 Bq kg-1を下回った.また,玄米の放射性セシウム濃度は除染により減少したが,その程度は土壌と同様に,圃場により異なった.撹乱要因を排除できない2013年南相馬市農家圃場の20試験区を除くと,玄米の放射性セシウム濃度を土壌の放射性セシウム濃度で除して算出した移行係数は,収穫時土壌の交換性カリ含量と相関が認められ,その相関関係に除染の有無による明確な違いは認められなかった.したがって,除染により放射性セシウムの移行リスクが低下した圃場においても,土壌の交換性カリ含量を低下させないような対策が必要と推察された.

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© 2016 日本作物学会
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