日本作物学会紀事
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栽培
中華めん用コムギ品種「ちくしW2号」の子実タンパク質含有率における施肥窒素の利用率と地力窒素の寄与率
石丸 知道荒木 雅登荒木 卓哉山本 富三
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2016 年 85 巻 4 号 p. 385-390

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抄録

中華めん用コムギ「ちくしW2号」の子実タンパク質含有率が高位安定化する効率的な施肥体系を構築するために,重窒素標識硫安(以下,15N標識硫安)を用いて,コムギ植物体中の窒素動態ならびに子実窒素含有量における施肥窒素の利用率および施肥窒素と地力窒素の寄与率を明らかにした.コムギ植物体中の窒素構成比は,登熟初期には茎葉で78~83%,穂で17~22%であったが,茎葉に蓄積された窒素が登熟期間中に子実へ転流し,登熟後期には87~89%の窒素が子実へ集積した.施肥ごとの窒素利用率は,基肥が15~20%と最も低く,分げつ肥は37~56%と年次間差が認められ,穂肥および穂揃期追肥は67~74%と高かった.子実窒素含有量における施肥および地力の窒素寄与率は,基肥が4~7%と最も低く,分げつ肥および穂肥が9~14%,穂揃期追肥が24~30%,地力が41~49%で最も高かった.子実タンパク質含有率を高位安定化するための今後の課題として,窒素利用率の低い基肥量の削減,窒素吸収量に年次間で差が認められた分げつ肥の窒素利用率の向上,施肥窒素利用率の高い穂肥の施肥時期および施肥量の見直し,地力の向上による窒素吸収量の増加が挙げられる.

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© 2016 日本作物学会
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