日本作物学会紀事
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栽培
北海道における虎豆(Phaseolus vulgaris L.)の収量性に及ぼす土壌中の窒素と土壌硬度の影響
唐 星児黒崎 英樹林 哲央中村 隆一
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2017 年 86 巻 2 号 p. 160-168

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抄録

虎豆栽培の土壌管理に関する知見を得るため,北海道北見地域において2005年に地上部生育の推移と収穫期の根の垂直分布を,2005~2007年に黒ボク土9,台地土14,下層泥炭の低地土2カ所の各圃場における土壌中の窒素量,および土壌硬度1.5 MPa出現深 (有効土層深) と子実重との関係を調査した.虎豆の地上部生育量は7月の開花始めより急激に増加し,増加速度は開花盛期後に最大となった.黒ボク土と台地土を込みにした場合,播種直後の深さ0~20 cmの作土の熱水抽出性窒素含量と子実重との間に有意な正の相関関係が認められ,熱水抽出性窒素含量が多い圃場では,開花期以降に作物体が吸収可能な窒素の供給も多くなるためと考えられた.黒ボク土では収穫期の土壌無機態窒素量と子実重との関係が低地土と異なり判然としなかったが,これは窒素が速やかに無機化され作物体に吸収,利用されたためと推察した.また,開花盛期における有効土層深が50 cmまでの範囲では,それが深い圃場ほど子実重は重い傾向にあった.一方,台地土の子実重が200 g m–2未満と軽い圃場では作土の熱水抽出性窒素含量が0.05 g kg–1未満であった.また,下層泥炭の低地土の子実重は,他の土壌区分で熱水抽出性窒素含量や有効土層深から推定される値に比べ明らかに軽かった.以上のことから,土壌の種類や土壌中の窒素量は虎豆の子実重に大きく影響を及ぼすが,作土の熱水抽出性窒素含量が0.05 g kg–1以上の場合に,有効土層を拡大する効果が顕れやすいことが明らかとなった.

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