日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
香川県における不耕起乾田直播栽培水稲の播種期が収量,外観品質,食味に及ぼす影響
赫 兵豊田 正範楠谷 彰人
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2017 年 86 巻 3 号 p. 267-275

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抄録

香川県の基幹品種である中生の「コガネマサリ」,「おいでまい」,「ヒノヒカリ」を供試し,2015年に香川大学農学部内実験水田において,不耕起乾田直播栽培における播種期の違いが収量,食味,品質に及ぼす影響を検討した.播種期は4月23日(Ⅰ区),5月7日(Ⅱ区),5月21日(Ⅲ区) の3処理とし,比較のために「コガネマサリ」の6月10日移植栽培区を設けた.播種期別の収量はⅢ区,Ⅱ区,Ⅰ区の順に多い傾向を示した.移植栽培の「コガネマサリ」を基準にした食味官能試験の総合評価は,収量とは逆にⅠ区,Ⅱ区,Ⅲ区の順に高い傾向があった.玄米の未熟粒や被害粒などを除いた整粒歩合はⅡ区とⅢ区の差は小さく,Ⅰ区で大きく低下する傾向がみられた.播種期によるこれらの違いを決定づけたのは出穂期から成熟期までの平均気温(登熟気温) であった.すなわち,Ⅲ区は登熟気温が21.4~22.4℃で収量に対する適温(22℃) とほぼ一致したが食味に対する適温(25℃) よりは低過ぎたために多収であるが食味不良となる傾向を示し,Ⅰ区は登熟気温が24.2~24.5℃で食味適温に近かったが収量適温より高過ぎたために良食味であるが低収となった.さらに,Ⅰ区は登熟温度が白未熟粒増加開始温度(24℃) を超えたために玄米品質も低下する傾向がみられた.これらより,Ⅲ区は収量面では好ましいが食味が劣り,Ⅰ区は食味面では優れるが収量が低く,品質も劣る傾向にあることが判明した.したがって,収量,品質,食味を総合してみた場合,香川県における中生品種の不耕起直播栽培の播種適期は,現行より2週間から20日程度早い本試験におけるⅡ区の前後と考えられた.

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© 2017 日本作物学会
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