水稲育苗箱全量基肥技術と水稲疎植栽培は,共に育苗の省力・低コストを狙った栽培技術である.水稲疎植栽培では単位面積あたりに必要な育苗箱数は減るが,その一方で同時に水稲育苗箱全量基肥技術を用いると,育苗箱内の1箱当たりの施肥量を増やす必要性が生じる.しかし,水稲育苗箱全量基肥技術による育苗箱内の施肥量は通常1 kgを超えない範囲とされており,施肥量の上限を見極める必要がある.そこで,水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」NK301-100を用い,ビニールプール育苗条件下で育苗箱内の肥料投入量を箱当たり600 gから最大2500 gまで変化させて苗の生育やマット強度,移植精度などについて3か年検討した.その結果,育苗期間が概ね3週間程度の条件で,育苗箱内の施肥量は1300 gまでであれば,苗の生育やマット強度,移植精度に実用上の支障がないことが明らかになった.