日本作物学会紀事
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栽培
春播性遺伝子Vrn-D1の準同質遺伝子系統を用いた春播型コムギと秋播型コムギの発育特性の比較
松山 宏美関 昌子島崎 由美小島 久代乙部 千雅子高山 敏之大下 泰生藤田 雅也渡邊 好昭小田 俊介加藤 鎌司
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キーワード: コムギ, Vrn-D1, 幼穂分化
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2017 年 86 巻 4 号 p. 311-318

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抄録

早生コムギ2品種を背景とした春播性遺伝子Vrn-D1に関する準同質遺伝子系統(春播型及び秋播型系統)を,早期・標準・晩期の3つの播種時期を設定して栽培し,Vrn-D1が圃場環境下でコムギの発育過程に及ぼす影響を検討した.春播型が二重隆起形成期を越えたことが観察された時期は秋播型より,早期播種では109~112℃日,標準播種では88~102℃日早く,播種後の日平均気温が12℃以下の範囲と低温であった晩期播種では幼穂分化過程に播性間差はなかった.従って,Vrn-D1による二重隆起形成期の早期化効果は,標準的かそれより早く播種した圃場環境下では明確であるが,遅く播種した圃場環境下では観察されないと示された.春播型が頂端小穂形成期を越えたことが観察された時期は秋播型より,早期播種では113~214℃日,標準播種では30~98℃日早かった.播種から二重隆起形成期の発育の温度反応は播性間で異なったが,二重隆起形成期から頂端小穂形成期の発育の温度反応には播性間で差がなかった.春播型の茎立期は早期播種と標準播種では秋播型より早く,開花期と成熟期の播性間差はなかった.これらのことから,Vrn-D1は播種後の日平均気温が概ね12℃以上と気温が高い圃場環境において二重隆起形成期を早期化させ,圃場環境条件を介して頂端小穂形成期と茎立期も早期化させるが,その後の開花期,成熟期についてはほとんど影響しないと示唆された.

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