農研機構東北農業研究センターが育成した中食・外食用の水稲3品種「ちほみのり」,「萌えみのり」,「えみのあき」における標肥移植栽培,多肥移植栽培,標肥直播栽培,多肥直播栽培の5年間の生産力検定試験の結果を解析した.多肥栽培は標肥栽培と比較して,穂数と1穂籾数が多いために精玄米重が多く,品質は同程度であった.直播栽培は移植栽培と比較して,穂数は多いが,精玄米重が少なく,品質は同程度かやや優れていた.早生品種の「ちほみのり」は,「あきたこまち」と比較して,多肥栽培,および直播栽培において,精玄米重が有意に多く,品質は同程度であった.中生品種の「萌えみのり」は,「ひとめぼれ」と比較して,多肥移植栽培および多肥直播栽培における精玄米重が有意に多く,品質はやや劣っていた.中生品種の「えみのあき」は,「ひとめぼれ」と比較して,多肥移植栽培および多肥直播栽培における精玄米重がやや多く,品質はやや優れていた.これらの結果から,東北農研育成3品種は,多収および低コスト化・省力化が求められる中食・外食向けの米生産に適していると考えられた.本研究の結果とこれまでの多収品種に関する報告との比較を通じて,東北地域における中食・外食向けのさらなる多収品種を育成するためには,1穂籾数を多く,千粒重をやや重くすることが重要であると考察した.