日本作物学会紀事
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栽培
関東におけるダイズの遅まき密植栽培が莢先熟の発生と収量に及ぼす影響
鈴木 大輔飯沼 大輔柴崎 さやか渋谷 美奈子伊藤 芳恵松井 大地野々川 香織肥後 昌男磯部 勝孝
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2017 年 86 巻 4 号 p. 347-357

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抄録

本研究では関東における梅雨明け後の7月播種での密植栽培が6月播種に比べて子実収量と莢先熟の発生に対してどの程度の差があるのかを明らかにすることを目的とした.圃場実験を2013年から2015年に日本大学生物資源科学部付属農場(神奈川県藤沢市)の普通畑圃場で行った.供試品種は「エンレイ」,「タチナガハ」,「あやこがね」である.圃場試験の試験区は6月普通区,7月普通区,7月密植区,7月超密区である.ポット試験は2014年に1/5000 aワグネルポットを用いて行った.子実収量はいずれの品種も7月密植区,7月超密区で6月普通区より増加した.また,6月普通区と7月普通区で収量に有意な差がなかった.6月普通区と7月普通区の子実収量に有意な差がみられなかった要因は7月普通区で1莢粒数が増加し,区間で100粒重に差がみられなかったことが大きいと考えられた.成熟整合性程度はいずれの品種も6月播種区で7月播種区より低く,7月播種区では栽植密度の違いは莢先熟の発生に影響しなかった.6月播種区で莢先熟の発生がみられた要因の一つにカメムシ類による被害粒の増加が考えられ,7月播種区で莢先熟の発生が少ない要因として子実肥大期以降に木部液を通して地上部に輸送されるサイトカイニン量が減少したことが考えられた.以上のことから,関東南部の普通畑で「エンレイ」や「タチナガハ」などの品種を7月に播種しても6月に播種した時と同等の子実収量が得られ,さらに6月播種に比べて7月播種では莢先熟の発生も抑制されると考えられる.また,7月播種で莢先熟が発生しない要因として7月播種区では6月播種区と比べ,開花期から子実肥大始期までの平均気温が低く,平均降水量が多かったことが要因の一つにあると推察される.

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© 2017 日本作物学会
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