日本作物学会紀事
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栽培
代かき同時浅層土中播種機を用いた水稲無コーティング種子湛水直播栽培における根出し種子による苗立ち向上
伊藤 景子白土 宏之大平 陽一川名 義明
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2018 年 87 巻 2 号 p. 140-146

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抄録

無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種栽培における苗立ち向上を目的として,播種時の催芽程度の違いが苗立ちや初期生育に与える影響について検討した.まず室内試験において,催芽種子と芽のみ伸長させた芽出し種子,根のみ伸長させた根出し種子,更に機械播種時の催芽部分の損傷を想定して芽や根を切除した種子を播種し,出芽と苗立ち,初期生育を調査した.芽出し種子と根出し種子は,催芽種子より出芽が早く苗立ちと初期生育は向上した.根出し種子は根を切除しても同様の向上効果が認められたが,芽出し種子は芽を切除すると苗立率は低下した.このことから,損傷の影響を受けにくい根出し種子は芽出し種子より実用的であると判断した.次に,根出し種子の苗立ちや初期生育の向上効果を秋田県大仙市の圃場において検討した.催芽種子と根出し種子を4月下旬の早期と5月中旬の普通期に代かき同時浅層土中播種し,苗立ちと初期生育を調査した.根出し種子は室内試験と同様に苗立ちと初期生育の向上効果が認められ,播種後10日間の平均気温が11.7~18.6℃の幅広い温度条件において苗立率と初期生育が向上した.以上より,根出し種子の播種は代かき同時浅層土中播種栽培における苗立ちの向上や安定化に有効な技術であると考えられた.

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© 2018 日本作物学会
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