北海道で育成した酒造好適米(以下,酒米)品種の農業特性と酒造適性の産地間・品種間差異を検討し,農業特性では食用米品種との比較も行った.岩見沢市と比布町で栽培した酒米品種「吟風」と「彗星」ならびに 食用米品種「ゆめぴりか」と「ななつぼし」を用いた.データ解析には2005~2013年の北海道水稲奨励品種決定基本調査と醸造用原料米全国統一分析の結果を用いた.玄米収量は,食用米2品種の平均より酒米2品種の平均の方が,また「吟風」より「彗星」の方が,それぞれ多かった.その主要因は,前者では千粒重が重かったこと,後者では不稔歩合が低く,千粒重が重かったことであった.精米歩合70%の白米の粗タンパク質含有率(以下,タンパク含有率)は,食用米,酒米ともに,岩見沢市より比布町の方が,また,いずれの産地でも「吟風」より「彗星」の方が,それぞれ低かった.低タンパク含有率の酒米生産のためには,産地と品種の選定が重要である.20分吸水率は,「吟風」より「彗星」の方が低く,その主要因は心白発現率が低かったことであると推察した.蒸米吸水率は有意な産地間・品種間差異を示さなかった.前報で示した兵庫県の酒米品種「山田錦」と比較すると,いずれの産地でも北海道の酒米2品種の方が,耐倒伏性は強く,玄米収量は多かった.一方,千粒重は軽く,タンパク含有率は高く,20分吸水率と蒸米吸水率は低いなど,酒造適性は劣った.今後は,北海道の酒米品種における,これらの酒造適性を栽培法や育種によって兵庫県の「山田錦」並に改善する必要がある.