近年,気候変動の拡大に伴い,東北地方のダイズ生産への土壌乾燥害の影響が顕在化していると指摘されているが,土壌乾燥による減収の実態は十分に理解されていない.本研究では,農研機構メッシュ農業気象データを用い,FAO56モデルを農研機構東北農業研究センター刈和野試験地の圃場に適用し,そこで過去33年間に実施されたダイズの生産力検定試験成績(収量や百粒重など)と気象要素および土壌体積含水率との関係を解析した.土壌パラメータ(圃場容水量,永久しおれ点,耕深など)を取得することにより,FAO56モデルは作付期間中の土壌体積含水率の経時変化をうまく再現した.過去33年間の収量や百粒重と8月の平均気温や土壌体積含水率との間には有意な負の相関があった.さらに,土壌体積含水率を制御変数とした場合,収量や百粒重と平均気温との偏相関係数は有意でなかった.したがって,本試験成績においては,年々の土壌水分の変動によって,収量や百粒重の変動を主に説明でき,土壌乾燥の影響が大きいことが示された.このように,農研機構メッシュ農業気象データとFAO56モデルは,国内のダイズ作況への土壌乾燥の影響の実態を把握するのに有効な手段になると考えられる.