日本作物学会紀事
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栽培
バレイショにおける種いものジベレリン処理による小粒塊茎増収効果の品種間差異
津田 昌吾辻 博之田宮 誠司森 元幸
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2019 年 88 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

バレイショの生産現場では,全粒種いもや2つ切りサイズの小粒規格の種いもに対する要望が高まっている.小粒塊茎の生産方法として密植栽培やヒートショック処理の利用があげられるが,コストや効果の安定性の面において問題がある.そこで,本研究では,バレイショ品種の男爵薯とトヨシロを用い,種いものジベレリン処理によるバレイショの小粒塊茎増収効果の品種間差異を検討した.いずれの品種においてもジベレリン処理によって種いもの芽数および茎数が増加し,収穫期の小粒塊茎数が増加した.しかし,芽数や茎数を含む様々な生育形質においてジベレリン処理と品種の間に有意な交互作用が認められ,種いものジベレリン処理に対する感受性に品種間差異があることが示唆された.ジベレリンは塊茎形成を阻害することが知られており,トヨシロでは無処理区に比べ処理区の塊茎肥大早期の塊茎重が少なく,植え付け前のジベレリン処理の影響が塊茎形成の時期まで続くことが示唆された.しかし,トヨシロではジベレリン処理区において塊茎肥大早期以降の塊茎間の養分競合が緩和されたことにより,その後の塊茎数の減少が抑制され,結果的に男爵薯同様,収穫期の小粒塊茎数が増加した.本研究により,異なるジベレリン感受性を示した2つのバレイショ品種において,種いものジベレリン処理により小粒塊茎が増収することを明らかにした.

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© 2019 日本作物学会
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