北海道の酒造好適米品種 「吟風」 と 「彗星」 における酒造適性の関連指標の年次変動について最高気温との関係を検討した.データ解析について,酒造適性の関連指標は2005~2013年の水稲奨励品種決定基本調査のサンプルを用いた醸造用原料米全国統一分析法による分析結果を用いた.気象データは出穂期前後80日間の毎日の最高気温を用いた.調査した形質の中では心白発現率の年次変動が最も大きく,次に粗タンパク質含有率の年次変動が大きく,これらの形質に比べて千粒重,20分吸水率および蒸米吸水率の年次変動は小さかった.出穂期−19~−10日 (−Ⅱ期) の最高気温が上昇すると,両品種の千粒重と 「彗星」 の心白発現率は増加し,「吟風」 の粗タンパク質含有率は低下する傾向を示した.このことから,−Ⅱ期の最高気温の年次変動は,両品種の千粒重,「吟風」 の粗タンパク質含有率および 「彗星」 の心白発現率の年次変動に大きく影響したと考えられた.出穂期+1~+10日 (+Ⅰ期) の最高気温が上昇すると,「吟風」 の心白発現率は低下し,出穂期+11~+20日 (+Ⅱ期) の最高気温が上昇すると,両品種の千粒重は増加し,20分吸水率は低下し,出穂期+21~+30日 (+Ⅲ期) の最高気温が上昇すると,「彗星」 の蒸米吸水率は低下する傾向を示した.以上から,+Ⅰ期の最高気温の年次変動は 「吟風」 の心白発現率の年次変動に,+Ⅱ期の最高気温の年次変動は両品種の千粒重と20分吸水率の年次変動に,+Ⅲ期の最高気温の年次変動は 「彗星」 の蒸米吸水率の年次変動に,それぞれ大きく影響したと考えられた.