2019 年 88 巻 3 号 p. 187-192
石油枯渇や地球温暖化への対応策として,バイオマスエネルギーの利用が注目されている.著者らは,エネルギーと食料との競合を避けるためセルロース系エネルギー作物として,エリアンサス (Saccharum spp.) に着目して栽培研究を進めている.エリアンサスはイネ科の多年生作物で,毎年,刈り株から再生するが,この過程における分げつ形成が高いバイオマス収量を支えている.本研究ではエリアンサス群落を構成する株を対象として,とくに生育初期における分げつ形成について解析を行った.その結果,再生株は発育形態学的に異なる3種類の分げつ,すなわち,枯死分げつ,旧分げつ,新分げつから構成されていることが明らかになった.株の再生時には,まず旧分げつが生育を開始し,それから少し遅れて新分げつが出現した.ポット栽培した材料を解剖して,分げつ芽の形成や生育の規則性について観察を行った結果,分げつ芽が動き出すためには,母茎の生育がある程度進む必要があることが示唆された.また,定点カメラによる写真撮影とコドラート法を利用して新分げつと旧分げつの形成位置を解析した結果,再生では株の周辺側に形成される分げつが多いこと,とくに新分げつでその傾向が著しいことが明らかになった.このような生育特性の結果,エリアンサスの株は年々,分げつ数が増えながら株が大型化していくものと考えられる.