東北地域の水田輪作体系では,幅広い作目を迅速に切替えることが重要であり,耕起・播種作業の効率化が求められている.本研究では,東北太平洋側地域に広く分布する黒ボク土水田転換畑において,チゼルプラウを用いた簡易耕同時播種栽培 (以下,CPS) の播種作業性,ダイズの生育,収量,品質について,省力・簡易栽培技術である散播浅耕栽培 (以下,散播) と比較し,その特徴を明らかにすることを目的とした.散播に比べCPSでは播種作業時間はやや短縮されたことから,CPSにおいても高い作業効率が達成されることが明らかになった.CPSの播種時の砕土率は,散播に比べて低かったものの,播種後20日頃の苗立ち状況や生育に有意な差は認められなかった.また,地上部乾物重の推移,開花期と子実肥大期におけるLAI,葉色に播種法間差は認められなかった.一方,開花期までの群落内の地際部における相対光量子密度の推移は散播よりもCPSでやや高かった.雑草の発生本数に播種法間差は認められなかったが,雑草の個体重はCPSで重い傾向がみられた.成熟期の生育,収量,品質に播種法間差は認められなかった.これらのことから,黒ボク土水田輪作体系下におけるチゼルプラウによる簡易耕同時播種栽培は散播浅耕栽培と同様にダイズに適した省力栽培法であることが明らかとなった.