日本作物学会紀事
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収量予測・情報処理・環境
サトウキビの糖度上昇期において台風を含む気象要因が糖蓄積に及ぼす影響
服部 太一朗安達 克樹早野 美智子梅田 周
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2020 年 89 巻 2 号 p. 134-142

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抄録

本研究では,種子島研究拠点における約20年分の生産力検定試験データを基に,糖度上昇期にあたる秋季以降の糖蓄積増加量に及ぼす気象要因の影響について,従来は考慮されてこなかった台風の影響を含めて解析した.対象品種はNiF8,栽培型は春植えとした.試験データから10~1月の茎当たり糖蓄積増加量を求め,これを目的変数として気象要因との重回帰分析を行った.その際,台風の影響を葉身障害による光合成阻害と定義し,台風後に有効積算温度が200℃ dayに達するまで,台風の風速に応じた任意の割合で日射利用効率が低下すると仮定した.重回帰分析の結果,台風の最大瞬間風速が20~30 m s–1では10%,30 m s–1以上では60%の光合成阻害が生じると設定した条件で,重回帰分析モデル式の決定係数が最大となった.得られたモデル式を用いて,10月下旬に連続して台風が発生した平成29/30年期の糖蓄積増加量を推定した結果,実測値に近い値が得られ,台風を考慮しない場合よりも推定精度が向上した.台風の影響も考慮した解析の結果,10月から12月においてサトウキビが利用可能な日射量,および11月,12月における降水量と気温が,糖蓄積に及ぼす影響が大きいことが示唆された.

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