一般にサツマイモを過湿条件で栽培すると,地上部の生育は旺盛になるが塊根収量は減少することが知られている.石川県で育成されたサツマイモ品種「兼六」の生産拡大を図るため,埴壌土の非湛水水田圃場を利用した栽培の可能性を検討したところ,塊根収量と塊根品質は砂壌土畑圃場と同程度であった.基肥施用は塊根数を増加させたが平均塊根重を減少させ,塊根収量は無施肥と同程度になった.基肥を施用せず挿苗8週後に施肥を行うと塊根数は抑制されたが,個々の塊根重が増加して増収となり,無施肥で多発した条溝の発生も抑制できた.また施肥方法の違いは遊離糖含量およびβ-カロテン含量に対してほとんど影響しなかった.これらの結果から,永久転換畑化や圃場整備などの排水対策を講じていない非湛水水田圃場でも,挿苗後施肥を行うことにより砂壌土畑圃場と同様に蒸切干などの加工に適した「兼六」塊根を収穫することができ,田畑輪換に活用できると考えられた.