日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
異なる温度条件下での貯蔵がサツマイモ品種「兼六」塊根の品質に及ぼす影響
坂本 知昭片山(池上) 礼子
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2020 年 89 巻 2 号 p. 156-161

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抄録

蒸切干やペーストへの加工用品種として,石川県で普及しつつあるサツマイモ品種「兼六」の貯蔵温度について検討した.「兼六」塊根の糖度の上昇には一定の低温処理が必要であり,サツマイモの一般的な貯蔵条件である13℃の定温貯蔵では,12週間の貯蔵期間中に腐敗塊根は発生しなかったが,スクロース含量と甘味度は上昇しなかった.また16℃の定温貯蔵では開始4週後から萌芽が進み長期貯蔵に不適であった.一方,6℃および9℃の定温貯蔵では,腐敗塊根が発生した開始6週後および10週後までスクロース含量と甘味度が上昇した.無加温の屋内貯蔵では,日平均温度が10℃以下になった開始4週後から,腐敗塊根が発生した12週後までスクロース含量と甘味度が上昇した.したがって10月末に収穫する「兼六」塊根の年内加工には短期間に糖度の上昇が期待できる6〜9℃での定温貯蔵が,年明け以降の加工には貯蔵開始8〜12週後に糖度の上昇が期待できる無加温の屋内貯蔵が有効であると考えられた.

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